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1918年論文『重力波について』(S.B.Preuss. Akad. Wiss., 154-167)
しかし、1929年には、エドウィン・ハッブルが、遠方の銀河の赤方偏移より、宇宙が膨張していることを示し、これにより、一般相対性理論の予測する時空の描像が正しいことが判明した。後にアインシュタインは宇宙項の導入を取り下げ、「生涯最大の失敗だった(the biggest blunder in mycareer)」とジョージ・ガモフに語ったという。
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・曲がった時空上の場の理論(Quantum fieldtheory in curved spacetime)
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一般相対性原理(generalprinciple of relativity)
一般共変性原理(principleof general covariance)
「慣性系での自由粒子運動は測地線である(inertial motion is geodesicmotion)」という原理
局所的ローレンツ共変性原理(localLorentz invariance)
ds2 = -dt2+dx2+dy2+dz2
gtt= -1 , gxx= gyy = gzz =1
曲がった空間を表現するときは、計量テンソルgμνは、時間と空間の関数となる。以後、添字のμとνは、時間と空間座標を表すもので、例えば、μ= 0(時間),1, 2, 3 (空間)成分を動くものとする。また、計量の表現も一般化し、
計量テンソルは、時空の曲率を決定する。リーマン幾何学の基本定理によれば、ローレンツ多様体(すなわち、捩率(torsion)のない計量空間)では、レヴィ・チビタ接続(Levi-Civita connection)と呼ばれる接続(connection)∇が一意に決まる。レヴィ・チビタ接続は、クリストッフェル記号(Christoffel symbols)と呼ばれる量を一意に決める。周知のようにクリストッフェル記号は記号であってテンサーではない。クリストッフェル記号は、計量の偏微分の組み合わせで表現すると次のようになる。
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となる。ここで、xμ(t)は、曲線γ(t)の座標であり、Γμνpは先に登場したクリストッフェル記号である。座標の常微分方程式として得られるこの式は、初期値と初速度を与えれば解を一意に決定する。この式は、曲がった時空における光・粒子の運動方程式である。
物理的には、このリーマン曲率テンソルから、2成分を縮約したリッチテンソル(Ricci tensor)Rμνと、さらに添字を縮約したリッチスカラー曲率(Ricci scalar)R
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と表され、アインシュタイン方程式と呼ばれる。ここでGμνはアインシュタインテンソル、gμνは計量テンソル、Λは宇宙項、Tμνはエネルギー・運動量テンソルである。非相対論的極限でニュートンの重力理論に収束することから、右辺の比例係数κ(アインシュタインの定数)は、
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アインシュタインの定数を用いると、より簡潔に
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ロバート・フックは1665年の『顕微鏡図譜』で引力の法則を論じた。フックは1666年に王立協会において"On gravity"(引力について)と題して講演をし、移動する物体は何らかの力を受けない限りそのまま直進すること(慣性の法則)および引力は距離が近いほど強くなる、という法則を追加した、とされる。またフックは、1666年に王立協会と交わした書簡において、世界のしくみについて次の3点を述べたと、ダガルド・スチュワート(Dugald Stewart)は自著Elements of the Philosophy of the Human Mindにおいて指摘している。
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記号 | 意味 |
⊢ | 公理や定理の肯定。 |
Df | 定義の印。定義の前に書く。 |
. : :. :: など | 記号の有効範囲を定めるための点。現代の論理学ではかっこ。 |
または | |
⊃ | もし・・・ならば |
~ | ・・・でない |
≡ | ・・・である時、その時に限り |
. | かつ |
∃ | 存在する there exists 例.(∃x)φx φxであるようなxが存在する。 |
( ) | すべての for all(every) 例.(x)φx あらゆるxについてφxである。現代記法では∀。 |
= | 同一性 |
xRy | xはyに対して関係Rにある。 |
R'y | xRyであるようなx。 |
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出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
万有引力 その6(終わり)
・万有引力の法則、その後
イギリス側の自然哲学者はニュートンの説を支持をする者が多かったが、その後、数十年以上の長い年数の議論を経て徐々に大陸側でも支持者が増え、やがては物理学においては自然界に存在する基本的な力だと見なされるようになっていった。
後の時代で発見された電磁気力では、引力と斥力がある、とされているのに対して、重力(万有引力)では引力しか存在せず、斥力は存在しない。
現在では、重力と呼ぶ場合には、質量に加速度を与える力全般を意味する。重力には、地球自転の遠心力のような慣性の力や、一般相対論で予言される慣性系の引きずりによる力も含まれるが、それらは万有引力ではない。
重力(または重力相互作用)の正体は、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論では、質量を持つ物体が引き起こす時空の歪みである、と説明された。これに対して、'万有引力'という用語は、ニュートンの定式化した重力の意味で用いられる傾向にある。
質量を持つ物体が自然発生的に引力を獲得する事は広く知られているが、そのような現象が起きる理由は一切解明されていない。
・一般相対性理論と重力
アインシュタインは、光速度に近い場合の力学として、1905年に特殊相対性理論を発表した後、加速度運動を含めた相対性理論の構築に取り掛かかった。そして重力場を時空の幾何学として取り扱う方法を模索し、1916年に一般相対性理論を発表した。
アインシュタインの重力場の方程式(アインシュタイン方程式)では、万有引力はもはやニュートン力学的な力ではなく、重力場という時空の歪みである、と説明されるようになった。また、重力の作用は、瞬時ではなく光速度で伝えられる、とされるようになった。
ニュートンの万有引力の法則では、質量を持った物体間の力であるとされるので、質量を持たない物質には万有引力は存在しないこととなる。一般相対性理論を採用すると、重力が時空の歪みであるとすると、光の軌道もまた重力によって曲がる事を意味する。これはアーサー・エディントンによる観測で実証されることになった。
一般相対性理論は、非常に強い重力が働く場を記述する。太陽系であれば、ニュートン力学に若干の補正項が加わる程度なので、ニュートン力学はその意味で近似的に正しいと考えて差し障りない。例えば前述の光の軌道の歪みについても、太陽の近傍においてようやく観測され得るものである
アインシュタイン方程式は、通常の物理の方程式と同様、時間反転に対して対称なので、宇宙全体に適用すると、重力の影響で収縮宇宙の解と共に、膨張宇宙の解が得られる、という。
一般相対性理論の発表当時は、ハッブルによる膨張宇宙の発見前で、アインシュタインは「宇宙は静的で安定している」と考えていた。自身の方程式が、動的な宇宙を予言したため、アインシュタインは万有引力に拮抗する万有斥力があると想定し、重力場の方程式に宇宙項を加えることで、静的な解が存在できるように重力場の方程式を修正した。
後に彼は宇宙項を「生涯最大の過ち」と悔いた。
「だが、宇宙項のアイデアは現在の宇宙論では、宇宙のインフレーションや宇宙の加速膨張を説明するものとして復活していると言える」と言う。
・素粒子物理学と重力
素粒子物理学では、自然界に存在する四つの基本的な相互作用のひとつとして、素粒子間に働く重力相互作用とみなされ、重力子(グラヴィトン)という素粒子により媒介するとみなされるが、素粒子としての重力子は現在のところ未発見である。素粒子間の重力相互作用は無視できるほど小さいが、素粒子と地球との間の重力を考慮する必要があることもある。
(※「ひとつの原子に存在する電子の数と陽子の数は同じで、種類によって数が決まっている。により、やはり電荷を帯びた電子が運動する事により電磁波が生まれ、それが引き付けあう力(反発力より若干大きい為)が発生し引力として認識される、とする説もある。)
・量子重力
近年では、量子力学と一般相対性理論の結合、重力の量子化が試みられ、量子重力と呼ばれている。格子重力などさまざまな試みがあるが、実現は困難である。量子重力を宇宙論に適用する試みは、量子宇宙論と呼ばれる。
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出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
重力場
重力場(gravitational field)とは、万有引力(重力)が働いている場のことである。
重力および重力場を記述する手法としては、ニュートンによる重力理論にもとづく手法と、アインシュタインによる一般相対性理論にもとづく手法がある。
ニュートンの重力理論によれば、ある質量m0に働く重力F-は、遠距離にある別の質量miによる重力の重ねあわせであり、その重力は質量に比例し距離の 2 乗に反比例する。
これは、質量m0が、位置r0-に存在する重力場f-(ro-)から力を受けると解釈することができる。(記号”-“は、文字の上に”→”を付す)この場合、ニュートン重力場は
となる。
一方、一般相対性理論によれば、時空に質量やエネルギーや運動量が存在すると、時空がゆがむ。ゆがみはアインシュタイン方程式
で表される。
ゆがんだ時空中では、物体の軌跡や光線が曲がる。これは質量やエネルギーや運動量のつくる重力によって軌跡や光線が曲げられたとみなされ、時空のゆがみが重力場と解釈できる。
ただし、一般相対性理論の基本原理である等価原理によると、加速する系における物体の運動と、重力場のなかでの物体の運動は(局所的には)区別できない。つまり、万有引力の源となる質量やエネルギーや運動量のない時空においても、座標変換によって重力場を作ることができることになる。
質量やエネルギーや運動量によってゆがんだ時空のみを重力場とみなすか、それとも「ロケットが加速すると重力場が生じる」という言い方も許容するか(座標系の取り方によって計量テンソルがミンコフスキーの計量テンソルからずれた時空も重力場とみなすか)という立場の違いによって、一般相対性理論における重力場には解釈の余地があることになる(もちろん、立場のちがいによって軌跡や光線の計算結果に差が出ることはない)。
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出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
時空
時空(spacetime)は、時間と空間を合わせて表現する物理学の用語、または、時間と空間を同列に扱う概念のことである。時空間(time and space)ともいう。
・概要
かつてニュートンは時間と空間は絶対的なものであるとした。空間とは物理現象が起きる入れ物であり、時間は宇宙のどこでも一様に刻まれるもの、と考えた。しかし、アインシュタインは相対性理論を構築し、時間と空間を合わせたものを四次元時空と呼び、四次元時空こそが物理学の対象だと導いた。具体的には、以前は独立に存在すると考えられていた時間と空間が、ローレンツ変換によって入り混じり(特殊相対性理論)、時間の進み方は運動状態の違う観測者では異なることが示された。また、一般相対性理論によって、時空は物質の存在によって歪み、この歪みが重力の正体であることが説明された。どちらの概念も、現代物理学では標準として受け入れられている。
素粒子物理学や場の理論など現代の理論物理学では、さらに空間の次元を広げた高次元時空で基礎方程式を考えることで、数学的に矛盾をなくしたり、美しい形式としてまとめる工夫が行われている。この考えを発展させて、初期宇宙を考えるときに空間の次元を上げて高次元宇宙を考える試みが1980年代から積極的に行われている。また、1999年にリサ・ランドールとラマン・サンドラムによって提案されたブレーンワールドモデルは、『我々の住む4次元時空は、重力だけが伝播できる5次元時空中の膜のような4次元断面である』と考えることで、基本的な力のヒエラルキー問題を解決しようとする試みである。いずれも、余剰次元は、空間の次元である。
一般相対性理論と量子力学を融合する量子重力理論構築のステップとして、時空の量子化の手法がいろいろ試みられている。このような現状下にあり、本理論の範疇にある超弦理論は、有力な手法として期待されている。なお、不確定性原理を時空に当てはめるならば、時空の大きさがプランク長程度のものを考えるとき、時空自身は、存在時間がプランク時間程度で生成・消滅する物理的対象となる。このような描像は、時空泡 (space-time foam) と呼ばれ、1955年にジョン・ホイーラーによって提案されているが、この時空泡が一般相対性理論と量子力学の両立を困難にしている本質である。これは従来の粒子を点として扱うことにより、不確定性原理の帰結として、上記のミクロスケールにおいて現出する量子的混乱状態であるが、超弦理論では、基本構成要素をゼロ次元の点粒子ではなく、1次元の"ひも"とすることにより、両立可能となる理論でもある。
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プランク長
プランク長(Planck length)は、長さのプランク単位である。記号lpで表され、コンプトン波長をπで割ったものとシュヴァルツシルト半径とが等しい長さとなる質量で定義される。その値は次のようになる。
この単位は自然単位による計測系を作ろうとしていたマックス・プランクによって作られた。プランク長はプランク質量に基づくものである。この単位が提唱されたときには量子力学や一般相対性理論は知られていなかったが、後に、プランク長の距離では重力が量子力学の影響を示すことが明らかとなった。
観測可能な宇宙の推定の大きさ(共動距離) ( 直径 930億光年 = 8.798 × 1026 メートル ) は、5.444 × 1061プランク長である。量子カオス系においてはプランク長よりも小さいスケールが現れることがある。大きさがないといわれている素粒子のシュヴァルツシルト半径はプランク長以下であるが、プランク長以下の長さが存在するか否かは判明していないことなどから実際に素粒子がシュヴァルツシルト半径を形成しているかどうかは定かではない。
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特異点
特異点(singularity)は、ある基準 (regulation) の下、その基準が適用できない (singularな) 点である。したがって、特異点は基準があって初めて認識され、「 - に於ける特異点」「 - に関する特異点」という呼ばれ方をする。特異点という言葉は、数学と物理学の両方で用いられる。
・例複素解析における正則関数の正則性 (regularity) に関する特異点とは、複素関数で微分不可能な点をさす。具体的には、可除特異点 (removable singularity)、極 (pole)、真性特異点 (essential singularity)の3種の孤立点がある。有理関数 1/x に於ける特異点は、x = 0 であり、これは 1 位の極である。
局所的な変換が一対一を保たない点。円座標平面 (r,θ) に於ける特異点は、r = 0 である。
宇宙物理学では重力に関する特異点が考えられ、重力の特異点 (gravitationalsingularity) という。ブラックホール内には、時空に於ける特異点が存在する。(特異点定理参照)
重力の特異点(gravitationalsingularity)は、概略的には「重力場が無限大となるような場所」のことである。
重力場の量には曲率や物質の密度の量について含んでいる。時空の特異点で重要なのは曲率特異点と円錐特異点である。また、特異点が事象の地平面に含まれているかどうかで分類することが出来る。
一般相対性理論の解または他の重力理論(超重力と呼ばれることもある)はしばしば計量が無限大に発散するような点を結果として与えることがある。しかし、それらの多くの点は実は
完全に正則である。さらに言えば、その無限はその点に対して不適切な座標系を用いた結果にすぎな
い。よってその点が特異点であるかどうか確認する必要がある。例として、回転していないブラックホールを表すシュヴァルツシルトの解を挙げる。ブラックホールから十分に離れた系の座標系で、事象の地平線での計量は無限大となってしまう。しかしながら、事象の地平線上の時空は正則である。正則性は他の座標系(クルスカル座標系 (Kruskal-Szekerescoordinates) ではその点の計量が滑らかであることから分かる。一方で、ブラックホールの中心は、同じように計量は無限大となる、解は特異性が存在することを示している。
回転していないブラックホールの特異点は一点に発生する。それは点の特異点と呼ばれる。回転しているブラックホールのカー解では、特異点はリング状に発生する。
特異点定理またはペンローズ・ホーキングの特異点定理(Penrose–Hawkingsingularity theorems) は、重力は重力の特異点(gravitationalsingularity)を必要とするかどうか、という問いへの、一般相対性理論による結論のまとめである。
これらの定理は、物質は妥当なエネルギー状況 (energy condition) を満たしているため、この問いに肯定的に回答している。これは、妥当な物質をともなう一般相対性理論の厳密
解は、一般相対性理論が崩壊する特異点を含んでいる、ということを示している。
1960年代、時空のもつ大域的構造の研究に取り組んだホーキングとペンローズによって証明された特異点定理には、いくつかのヴァージョンがある。
簡単に説明すると、「光的捕捉面 (trapped null surface) が存在しエネルギー密度が負ではない場合、有限で延長不可能な測地線が存在する」というステートメントである。後半は時空多様体における「特異点」の数学的な定義である。ほとんど一般的な状況で成立するので、一般相対性理論のもとでは特異点の存在は避けられない、と理解してよい。ただし、特異点定理は、特異点の存在について述べるだけであり、特異点の形状や位置を特定するものではない。
物理法則の視点からは、特異点の存在は、因果律を破壊する原因になるので避けたいものである。ブラックホールなどの特異点は、事象の地平面で覆われることで問題にならないが、事象の地平面で覆われない「裸の特異点」が出現すれば物理的に厄介である。ペンローズはこの立場から、宇宙検閲官仮説(cosmic censorship conjecture) を提唱した。自然界には裸の特異点は存在しないだろう、という予想である。しかし、この仮説の真偽については、明らかではなく、特殊な状況の数値シミュレーションでは裸の特異点が出現する、という報告もある。
相対性理論の示す特異点はあくまで古典論の範囲においてであり、量子力学的効果が無視できなくなる領域では相対性理論は破綻すると考えられている。したがって、量子効果