出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
光速 その2
・電磁場の伝播と光速度
マクスウェルの方程式によれば、電磁場の伝播速度は次の関係で与えられる。
(c は一定)
ここで、ε0 は真空の誘電率、μ0 は真空の透磁率である。ジェームズ・クラーク・マクスウェルはこの式を観測ではなく理論から導いたが、判明していた値ε0 = 8.85×10-12 N/V2、μ0 = 1.26×10-6 N/A2を代入すると、真空中の電磁波の速度が約30万 km/sとなり、フィゾーが測定した光速度とほぼ一致した。この事から、マクスウェルは当時正体がよくわかっていなかった光の波が電磁波の一種であることを提唱した。これは後にハインリヒ・ヘルツによって実証された。
-物質中の光速
光速は、物質中では真空中よりも遅くなる。屈折という現象がおきるのは、光速が媒質によって異なるためである。また、物質中の光速よりも速い速度で荷電粒子が運動することが可能であり、このときチェレンコフ放射が発生する。
物質の絶対屈折率は、真空中の光速をその物質中の光速で割った値で定義されている。たとえば水の屈折率は可視光領域波長で約1.33、真空中の光速度は約30万km/sであるから、水中での光速度は約22.5万km/sとなる。
-超光速の観測と実験
一般に、あらゆる情報や物質は、真空中の光速よりも速く伝播することは不可能であるとされている。相対論の方程式によれば、光速よりも速く移動する物体を仮定すると、実数で表すことのできない物理量が現れ、質量が無限大になってしまうからである。しかし、光速よりも大きな速度が出現する物理的状況というのは数多く存在する。
・光速よりも速く伝播するもの
-波動の速度と同時的イベント
光の「群速度」が光速を超えることが可能であるということは、理論的に古くから知られていた。ある最近の実験では、セシウム原子中の非常に短い距離を、光速の310倍の群速度でレーザー光線を伝えることに成功した。2002年にはモンクトン大学の物理学者アラン・ハッシュは、超光速の群速度をもつパルスを、長い距離にわたって伝えることに初めて成功した。この実験では、同軸フォトニック結晶の120メートルケーブルの中を、光速の3倍の群速度のパルスが伝播し。しかし、この技術を超光速の情報伝達のために使うことは不可能である。情報伝達の速度というのは前面速度(パルスの最初の立ち上がりが伝播する速さ)によっており、群速度と前面速度の積は物質中の光速の2乗に等しいからである。
このように光の群速度が光速を超えられるというのは、音速にあてはめて次のように理解できる。人々を、距離をあけて一列に並べたとする。そして、各々が自分の腕時計でタイミングを見はからい、短い間隔で順番に掛け声をあげさせるとする。このとき、彼らは隣の人の声を聞くのを待たずに声をあげることができる。またある例として、海岸に打ち上げられる波にも同じようなことが見られる。波と海岸線の間の角度が十分小さければ、砕ける波は、内陸を波が伝わるよりもずっと大きな速さで波長に沿って伝播することができる。
-光のスポットと影
たとえばレーザーが遠方にある物体の表面を横切ると、光のスポットの速度は簡単に光速を超えることができる。遠方の物体に影を投射させても同様である。どちらの場合も、物質や情報が光速を超えて伝播しているわけではない。