出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
光速 その1
光速(Speed of light)、光速度は、光が伝播する速さのことである。真空中における光速の値は 299 792 458 m/s(≒30万キロメートル毎秒)と定義されている。つまり、太陽から地球まで約8分20秒、月から地球は、2秒もかからない。俗に「1秒間に地球を7回半回る速さ」とも表現される。
現代の国際単位系では長さの単位メートルは光速と秒により定義されている。光速度は電磁場の伝播速度でもあり、マクスウェルの方程式で媒質を真空にすると光速が一定となるということが相対性理論の根本原理になっている。
重力作用も光速で伝播することが相対性理論で予言され、2002年に観測により確認された。
・記号c,c0の由来
光速は一般に記号cまたはc0で表される。これはヴィルヘルム・ヴェーバーによる「ヴェーバー定数」(Weber's constant)に由来する(ヴィルヘルム・ヴェーバーを参照)とともに、ラテン語で速さを意味するceleritas にも由来するものである。
・光速度の測定
光は人間が見たり音など五感で感じられる全てのものの中で圧倒的に速く、かつて光は光源から放たれた瞬間に見える、つまり、速度は無限大と考えられていた。ガリレオ・ガリレイは、遠く離れた2か所に置いたランプの合図を用いて光速度を測定する方法を提案した。しかし、この方法では光速があまりに速く、当時のいかなる計測器でもわずかな時間を正確に測る事ができなかったために有意な結果を得られなかった。
1676年にデンマークの数学者オーレ・レーマーは木星の衛星イオが木星に隠れる周期の変化と木星までの距離から光速を計算した。当時既に地球と木星およびイオの位置関係は正確にわかっていた。レーマーは、地球が木星から遠い位置にある際に、イオが隠れる時刻を調べ、光の速度が無限大ならば周期に応じた42.5時間置きに観測されるはずという「観測予定時刻」を計算した。そして地球が公転軌道上で木星に近づいた位置に移動した5ヵ月後に再度イオが隠れる時刻を調べると、「観測予定時刻」よりも早くなっている事を確認した。この結果からレーマーは光速を計算し、約21.4万 km/s という値を得た。これは実際の光速より3割ほど遅い数字だったが、光速が有限であり、初めて具体的な速度を示した。レーマーの友人アイザック・ニュートンもこれを認め、この光速の値を著書に記した。
1729年にジェームズ・ブラッドリーは季節による星の光行差から光速を求めた。
1849年、アルマン・フィゾーは回転する歯車を用いた光速の測定を行った。ランプの光をビームスプリッターで直角に曲げ、筒の中で720枚の歯がついた歯車を通過させて光を等間隔に分断して放ち、約8.6 km離れた反射鏡で折り返し、筒の中で同じ歯車を通して観察した。歯車の回転が遅いうちは、凹部を通った光は反射され同じ凹部から見える。しかし回転数を上げると、やがて反射光が凸部(歯の部分)で遮られるようになる。フィゾーは、この時の12.6回転/秒から、(8.6 km)×2 = 17.2 kmを光が進む時間は(1秒)/(12.6回転/秒)/(720×2)(歯車の凸部と凹部の間の個数 = 歯の数の2倍)= 0.000055 秒と計算した。これらから光速は約31.3万 km/sという値を得た。
1850年にフーコーは回転ミラーを使った光速の測定を行った。
1873年からマイケルソンはフーコーの方法を改良して光速の測定を続けた。
その後マイクロ波を使う方法、レーザーの使用などにより測定の精度が高まった。
1983年には、国際度量衡総会により、メートルを光速によって定義することとなった。これにより、真空中の光速が299 792 458 m/sと定義されたことになる。
木星を利用した光速度測定