出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
宇宙の年齢
宇宙の年齢とは、ビッグバンから今日までの時間を表す。最近の観測によると (137.98 ± 0.37) 億年であるとされる。この誤差はいくつかの研究プロジェクトの結果をすりあわせて得られたものである。観測装置と観測手法の発達は宇宙の年齢を極めて正確に測定するところまで来ている。この研究プロジェクトには、宇宙背景放射の観測と、宇宙膨張の測定が含まれる。背景放射の測定はビッグ・バン以来の宇宙の冷却時間を教え、宇宙膨張の測定は宇宙年齢を計算するための精密なデータを提供する。
・膨張
Λ-CDMモデルは、宇宙初期の一様で高温・高密度の状態から現在までの138億年にわたる進化を記述する。このモデルは理論的によく調べられており、最近のWMAPのような高精度の宇宙観測によって強く支持される。
Λ-CDMモデルに従う膨張の時間、すなわちビッグバン以来の時間よりも、宇宙の歴史は理論上は長い可能性があるが、宇宙理論家はこれを「宇宙の年齢」としている。
・天体の観測による下限
あらゆる天体は宇宙より若いはずであり、天体を観測し年齢を推定することで、宇宙の年齢の下限が導き出せる。
宇宙の年齢の観測については多くの観測方法があり、最も低温な白色矮星の温度と赤色矮星のターンオフポイントを含んでいる。これには観測限界があるがそれは多くが宇宙の年齢と同じか同程度だと考えられている。
宇宙は膨張するに従い徐々に冷えていくので電磁波の放射が弱くなることも観測方法のひとつとして数えられる。
年齢が測定されている中で最も古い天体は、てんびん座にあるHD 140283の (144.6 ± 8.0) 億年である。下限値に近い値ならば上記の宇宙の年齢とも矛盾しない。
・宇宙論
・ハッブル時間
宇宙論の方面から宇宙の年齢を計算するなら、最も重要なのはハッブル定数である。
ハッブルの法則によれば、あらゆる銀河は距離に比例した速度で遠ざかっており、その比例定数がハッブル定数である。膨張速度が一定ならば、ハッブル定数の逆数で定義される時間だけ過去には、全ての銀河は一点に集まっていたことになる(図の)。この時間をハッブル時間と呼ぶ。
小松英一郎ら (2008) によると、2008年現在最も高精度なNASAのWMAP(ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機)による観測に、他のいくつかの観測を加味した結果、ハッブル定数は (70.5±1.3) km/s/Mpc、ハッブル時間は(138.7 ± 2.6) 億年である。しかし、このハッブル時間をそのまま宇宙の年齢と考えていいかは議論の余地がある。宇宙膨張は加速や減速をするからである。
・WMAPの観測
WMAP等による初期の観測では、宇宙の年齢は (137.2 ± 1.2) 億年とされている。観測誤差は1億2000万年である。しかしこの計算結果はプロジェクトの基本的な計算モデルが正しいという仮説に基づいており、宇宙の計算に関する他のメソッドは異なった年齢を算出するかもしれない。例えば、相対論的粒子の余分な宇宙背景放射を仮定するとWMAPの誤差範囲を1桁拡大出来る。その後、より精密な値として (137.72±0.59) 億年が与えられ、プランク (人工衛星)が別の値を求めるまで最も正確な値であった。
デカップリングの表面(再結合時点の宇宙の全体サイズ)のサイズを決定する宇宙マイクロ波背景放射のパワー・スペクトルにおける最初のスペクトルのピーク位置を使用することによって、この測定は行われる。この表面(使用される解析結果による)への軽い移動時間は宇宙の信頼できる年齢をもたらす。モデルの正当性はこの年齢に対しほぼ1パーセントの誤差をもたらしていたと仮定する。