出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
プランク定数
プランク定数(Planck's constant)は、物理学における基礎定数である。量子力学の創始者の一人であるマックス・プランクにちなんで命名された。Hilfsgrößeの頭文字を取ってh と記される(Hilfs = auxiliary 補助、größe = quantity 大きさ、量)。単位は(J・s)である。
・概要
光子の持つエネルギー(エネルギー量子)εは振動数ν(ニュー)に比例し、その比例定数hがプランク定数と定義される:
ε=hν
光のエネルギーEは光子の持つエネルギーの倍数の値のみを取り得る:
E=nhν
プランク定数の2010年CODATA推奨値は
h=6.626 069 57 (29) x 10^-34 Js
である。
また、プランク定数 h を円周率π の 2 倍で割った値もよく使われるため、「エイチバー」と発音される専用の記号ℏ=h/2π(ℏ Unicode U+210F、JIS X 0213 1-3-61)が使われている。ℏは「換算プランク定数」と呼ばれている。ただ単に「プランク定数」と呼ぶ場合もある。ときにディラック定数と呼ぶこともある。
2010年CODATA推奨値は
ℏ=h/2π=1.054 571 726 (47) x 10^-34 Js
である。
・起源・歴史
-黒体放射
-3式の比較
レイリーとジーンズは黒体放射におけるエネルギー分布に関するレイリー・ジーンズの公式を提案した。この式は低振動数の領域で測定値によく合ったが、高振動数領域では発散し、大きく誤差が生じてしまった。一方、ヴィーンは1896年にヴィーンの公式を提案した。この式は高振動数領域で測定値によく合ったが、低振動数の領域では合わなかった。プランクは1900年に測定値によく一致するプランクの公式を提案した。この式は低振動数の場合と高振動数の場合にそれぞれレイリー・ジーンズの式とヴィーンの式に移行する内挿的な公式である。この公式を導出する過程で、光のエネルギーの受け渡しは大きさhνの単位のみで起こり得る、という仮定が必要となった。ここにhは普遍定数であり、後にプランク定数と呼ばれるようになった。
-光電効果
アインシュタインはプランクの理論の影響を受け、1905年、光が粒子のような性質を持つという光量子仮説を提唱し光電効果を説明した。アインシュタインの光電効果の考えは、1916年にミリカンによって行われた実験にて確かめられた。ミリカンがこの実験から求めた定数hの値は、プランクが黒体放射から得た値とよく一致した。
・理論
軌道角運動量やスピンは常に換算プランク定数の定数倍になっている。例えば、電子のスピンは±ℏ/2である。ただし、量子力学の分野ではプランク単位系や原子単位系を用いる場合が多く、その場合の電子のスピンは±1/2となる。
プランク定数は(位置)×(運動量)の次元を持ち、不確定性関係とも関係しているので、それゆえに位相空間での面積の最小単位であるとも考えられてきたが、最近では Zurek その他の研究で、量子カオス系においてはプランク定数以下のミクロ構造が現れる事がわかった。