出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
場の量子論 その3
・自発的対称性の破れ
ゲージ理論では、ゲージ対称性を満たす場合、必然的にゲージ場の質量がゼロになる。しかし、光子を除く現実の粒子は質量を持ち、質量が力の及ぶ範囲を決める。1964年、これを救ったのが、ピーター・ヒッグスらのヒッグス機構で、南部陽一郎の自発的対称性の破れを使い解決した。電弱統一理論で、高温状態で電磁力と弱い力が区別できなくなることを示す。
自発的対称性の破れの概念は、ハイゼンベルグが強磁性体モデルにおけるスピンのSU(2)回転対称性について論じたのが始まりとされる。1960年に南部は、超伝導のBCS理論をヒントに対称性の自発的破れの概念を場の量子論において定式化した。
・量子色力学・ワインバーグサラム理論
量子電磁力学 (QED) は可換ゲージ理論である。一方、量子色力学 (OCD) およびワインバーグ=サラム理論は非可換ゲージ理論である。量子色力学は3つの場のからみ合いであり、ゲージも3×3の行列となり、QEDの可換ゲージから、非可換ゲージにかわる。
弱い力と電磁相互作用は、1967年、場の量子論の枠組みで非可換ゲージ形式のワインバーグ=サラム理論により統一される。
強い力は、クォーク模型の完成後、1971年にヘーラルト・トホーフトの非可換ゲージの繰り込み可能性の証明を経て、1973年に繰り込み群を使ったデイビッド・グロスらによって場の量子論の枠組みで非可換ゲージ形式の量子色力学 (QCD) が完成する。
・場の量子化
-量子力学と生成消滅演算子
量子力学での生成消滅演算子について。
(電磁場はA(x,t)すなわち、空間と時間を引数とする場の量として表される。)
前提
ハミルトニアン
粒子の運動は粒子エネルギーを表すハミルトニアン H=T+Vをつかい、例えばシュレーディンガー方程式で表される。
H=T+V H;ハミルトニアン(粒子のエネルギー)、T;運動エネルギー、V;ポテンシャルエネルギー
調和振動子
ハミルトニアンは、バネに例えられる調和振動子の和として表せる。(調和振動子だけでなくいろいろな形式がある。)
生成消滅演算子 調和振動子の生成消滅演算子の項を参照
系のエネルギーH=T+Vを、虚数を使い因数分解すると生成消滅演算子が出来る。(いろいろな作り方があり、いろいろな形式がある。)
生成消滅演算子は、粒子を真空から励起させたり、消滅させたりする演算子となる。
これらを使い、場の形式になった粒子を再び場の形式に落としこめる。