出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
一般相対性理論 その5
・重力の繰り込み不可能性
一般相対性理論の内容
基礎とする原理
一般相対性理論は、次の原理を出発点にする。
一般相対性原理(generalprinciple of relativity)
物理法則は、すべての観測者(加速系にいるいないを問わず)にとって同じでなければならない。
一般共変性原理(principleof general covariance)
物理法則は、すべての座標系において同じ形式でなければならない。(最終的に成立する物理法則はテンソル形式と共変微分で書かれていなければならない)
「慣性系での自由粒子運動は測地線である(inertial motion is geodesicmotion)」という原理
物理的な力を受けない粒子の描く世界線(world line)は、時空の時間的(timelike)または光的(null)測地線である。
局所的ローレンツ共変性原理(localLorentz invariance)
特殊相対性理論の法則は、すべての慣性系の観測者に適用される。
時空は曲がっている(歪んでいる)
重力の発生原因として考える。
時空の曲率は物質に起因する
アインシュタイン方程式として結びついた。
一般相対性理論成立の歴史上、等価原理(equivalence principle)は、スタートポイントとして考えられたが、以上の原理を満たして構築された一般相対性理論から見直すと、一般相対性原理と運動の測地線原理の2つより帰結されるものである。
使用しているリーマン幾何学の特徴
一般相対性理論は、時空を4次元のリーマン空間(Riemannian manifold)として扱う。通常、数学でリーマン空間というとユークリッド空間をパッチワークのように張り合わせたものを指し、2点間の距離の2乗が非負の正定値計量と呼ばれる空間である。それに対して、一般相対性理論が扱うのは、時間と空間の意味をもつ座標を含むミンコフスキー空間を張り合わせたものであり、2点間の距離が虚数になり得る不定計量の空間である。このため、擬リーマン空間(pseudo-Riemannian manifold)とも呼ばれる。
パッチワークの張り合わせの方法はリーマン接続と呼ばれ、通常の数学でいうリーマン空間と一般相対性理論の擬リーマン空間は同じリーマン接続を使用する。リーマン空間には、次の特徴がある。
距離が方向によらない。つまり、計量は座標のみの関数で、座標の微分には依存しない。
曲率はゼロではないが、ねじれ(捩率)がゼロである。
・計量テンソル
時空のダイナミクスを扱うときに変数となるのは、時空の計量テンソル(metric tensor)である。計量テンソルとは、時空の2点間の距離を表すときの各座標の重みに相当する量である。例えば、最も簡単な、平坦な時空(ミンコフスキー時空)での距離表現を座標(t,x,y,z)を使って表すならば、時間方向を負、空間方向を正とする符号系を採用すると、
ds2 = -dt2+dx2+dy2+dz2
となる。これをミンコフスキー計量(metric)といい、計量テンソルgμνは、各座標成分の係数から、
gtt= -1 , gxx= gyy = gzz =1
行列形式で描けば、
となる。なお、ミンコフスキー計量は、文字η が使われることが多い。
曲がった空間を表現するときは、計量テンソルgμνは、時間と空間の関数となる。以後、添字のμとνは、時間と空間座標を表すもので、例えば、μ= 0(時間),1, 2, 3 (空間)成分を動くものとする。また、計量の表現も一般化し、
のように表す。ここで、上下に現れる同じ添字については常に和をとる、というアインシュタインの縮約記法を用いている。
計量テンソルは、時空の曲率を決定する。リーマン幾何学の基本定理によれば、ローレンツ多様体(すなわち、捩率(torsion)のない計量空間)では、レヴィ・チビタ接続(Levi-Civita connection)と呼ばれる接続(connection)∇が一意に決まる。レヴィ・チビタ接続は、クリストッフェル記号(Christoffel symbols)と呼ばれる量を一意に決める。周知のようにクリストッフェル記号は記号であってテンサーではない。クリストッフェル記号は、計量の偏微分の組み合わせで表現すると次のようになる。
ここで、xμは局所座標であり、添字の上下は、計量テンソル(共変テンソル)gμνとその反変テンソルgμνを用いる。