出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
等価原理 その2(終わり)
・アインシュタインの等価原理(Einstein's equivalence principle, EEP)
ニュートン力学では、「自由落下する観測者は、重力と慣性力が釣り合うので重力の作用がない」と説明されるが、弱い等価原理が成り立つならば、「自由落下する観測者は慣性系である」と考えることが可能である(より厳密には局所慣性系である、という)。
アインシュタインは、弱い等価原理を拡張して、慣性系で成立するすべての物理法則(重力や力学の法則を除いた、すべての物理法則)は等価である、という表現を行った。すなわち、慣性系にある実験室での、重力に起因しない実験結果は、実験室の速度や位置に依存しない。という原理をおいた。ここでの実験室のサイズも、また実験結果も、潮汐力を受けない程度に小さいことが必要である。
・アインシュタインの等価原理の検証
検証の手段としては、次元をもたない物理定数の定数性の確認がある。Oklo における微細構造定数の定数性の確認 (1976 - ) では、10-7の精度、クェーサーによる電子・陽電子質量比の測定 (2002 - ) では、10-1の精度で、定数性が確認されている。
・重力の理論に対する帰結
アインシュタインの等価原理から、重力の理論に対する制限として次の二つが導かれる。
時空の計量テンソル gμν は、対称テンソルでなければならない。
自由落下する物体の運動は、測地線として表現されなければならない。
・強い等価原理 (Strong equivalence principle, SEP)
アインシュタインの等価原理は重力の作用を除いた表現であったが、これを重力を含めても成り立つ、とする表現である。
小さな物体の重力場中での運動は、初期位置と初速度にのみ依存し、物体の種類によらない。
または、
慣性系にある実験室での実験結果は、重力に起因するものであっても起因しないものであっても、実験室の速度や位置に依存しない。
・強い等価原理の検証実験
検証の手段としては、重力定数 G の宇宙全体における一定性、または基本粒子の質量の等価性がある。太陽系内での観測や宇宙初期の元素合成の研究では、重力定数の変化は現在値よりも 10 % 以内であることが確かめられている。
・重力の理論に対する帰結
強い等価原理から、重力の理論に対する制限として次のことが導かれる。
重力の理論は、時空の計量テンソル gμν だけで書かれていなければならない。
・重力質量と慣性質量
重力質量は、ニュートンの万有引力の法則である。
F = G x m1m2 / r2
において現れる質量の m1やm2である。G は万有引力定数、r は質点間の距離。
慣性質量 miは、ニュートンの運動方程式である。
Mi = F / a
で物体に働く力 F と加速度aの比として定義される量である。
参考 1:重力質量と慣性質量の間の比例係数が 1 となるように万有引力定数の値が与えられる。
参考 2:ケプラーの法則を、運動方程式と万有引力の法則の組み合わせとして定式化する過程で「弱い等価原理」が必要となる。ニュートンの研究において、弱い等価原理が成り立つことは、振り子を振らせたときの周期の測定と、天体の運行の観測データが根拠となっている。