出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
等価原理 その1
等価原理(equivalence principle)は、物理学における概念の1つで、重力を論じる一般相対性理論の構築原理として用いられる他に、異なる座標系での物理量測定の一致性についての議論でも登場する。
・概要
使用する状況によって、次の3つの意味がある。
「物理法則は宇宙のどこでも同じでなければならない」というコペルニクス的なアイデアを指す。
「慣性質量と重力質量が同一である」あるいは「自由落下する物体の軌跡は、物体の種類によらず一定である」という原理(以下に紹介する「弱い等価原理」)を直接指す。
「局所的に観測される重力は、非慣性系にいる観測者の疑似的な力と同じである」あるいは「無限小の領域では、運動の加速度と重力加速度は区別できない」という、アルベルト・アインシュタインが一般相対性理論を構築するときに発見した原理を指す。
研究対象としては、以下に述べる弱い等価原理 (WEP)・アインシュタインの等価原理 (EEP)・強い等価原理 (SEP) の3つの表現に大別される。これらの等価原理が成立していることの確認は、現在でも実験の対象である。これらの原理が破れていることを積極的に示す実験結果は、現在まで報告されていない。
・弱い等価原理
弱い等価原理 (Weak equivalence principle, WEP) は、自由落下の一般性 (the universality of free fall) としても知られている。
自由落下する物体の軌道は、初期の位置と速度にのみ依存し、物体の種類によらない。
または、
与えられた重力場において、時空のある一点で発生する加速度は、物体の種類によらず一定である。
この原理が成り立つとするならば、重力のみを受けて運動する物体の軌跡はどの物体でも同じ、ということになる。ただし、ここでの物体は、それ自身が潮汐力を受けない程度に小さなものであることを仮定している。潮汐力が作用すると重力場自身の作用が変わるからである。
・弱い等価原理の検証実験
エトヴェシュ・ロラーンドによる1908年の実験が有名である。同じ質量の2つのおもりを天秤にかけ、重力加速度と地球の回転による加速度の違いで生じる天秤のねじれを利用して等価原理を検証しようというもので、その結果は、10-9 の精度であった。
現在でも米国ワシントン大学(ワシントン州)を中心として、1987年から Eöt-Wash 実験が続けられている。およそ、10-12 の精度で等価原理が確かめられている。