出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
衝撃波 その2(終わり)
・発生例
超音速飛行中の戦闘機やロケット、隕石や大気圏再突入した人工衛星などの周囲で発生する。また弾丸による発生も確認されている。地表に達すると窓ガラスを割るなどの被害を生じ、減衰してもソニックブームと呼ばれる大きな騒音になる。衝撃波を発生させるには大きな力が必要で、造波抵抗という抗力として作用するため、超音速飛行を実現するうえで大きな技術的課題となっている。
爆発によっても発生することがある。爆発の膨張速度が音速を超えると、表面に衝撃波が生じる。自然界の例としては火山噴火や雷などが挙げられる。人工的な爆発では、地表核実験などがあげられる。発生した衝撃波は伝播とともに急激に減衰して音波となり、「ドン」という、いわゆる爆発音になる。
ごく小規模なものとして、鞭を振るったときに先端部が音速を超えて発生するものがある。パシッと鳴る音は、衝撃波が減衰したソニックブームによる。
・研究
衝撃波の理論研究の歴史は、次のようである。
1858年にベルンハルト・リーマンが、衝撃波は断熱可逆過程で生成されるとして解析を行った。現在では実際にはこれは非可逆過程で起こっていることが知られている。
1870年にウィリアム・ランキンが、1887年にピエール=アンリ・ユゴニオがそれぞれ独立にランキン・ユゴニオの式を発表した。
1887年にエルンスト・マッハが、シュリーレン法を用いて衝撃波の写真撮影に成功した。
1905年にルートヴィヒ・プラントルは、マッハ1.5を達成できる小型超音速ノズルを製作し、斜め衝撃波と膨張波の特性について研究した。テオドル・マイヤー (Theodor Meyer) はプラントルのもと、1908年の博士論文でプラントル・メイヤーの膨張波の理論を発表した。
1918~1919年にブライアン(G. H. Bryan)は、円柱の周りの亜音速と超音速流れの理論解析の比較を行なった。
1927年にヘルマン・グロアートは、同一の翼型周りの亜音速状態での圧縮流と非圧縮流に対する揚力係数の変換式(プラントル・グロアートの相似則)を見出した。
・光の衝撃波
音波だけでなく、光(電磁波)においても衝撃波に似た現象が観測される。一般に媒質中の光速は真空中より遅く、例えば水中では真空中の3/4である。素粒子などが媒質中を高速で移動する際、これを上回ると発生する。
荷電粒子が原子内を通過すると、電子軌道が乱され電子の偏りが生じる。偏りは光子を放出して元に戻るが、通常は光子は打ち消し合って消えてしまう。しかし、荷電粒子が光速を超えていた場合、放出された光子の速度を超えて他の光子が放出されるため、追いつけず打ち消し合わない。この結果、光子は外部に放射され、チェレンコフ放射として観測される。
・太陽風の衝撃波
太陽系の果てでは、太陽風が銀河系の星間物質などの抵抗で超音速から亜音速に減速され、ゆがんだ球状の末端衝撃波面が形成される。一方、星間物質側から見ると太陽風によって減速されて傘型の衝撃波面を形成することになり、こちらはボウショックと呼ばれる。