出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
エバネッセント場(エバネッセント波)
エバネッセント場(evanescent field)とは、電磁波(光)の反射現象において、特定の条件下で反射する媒質内部に電磁波の浸透が発生する。その浸透した電磁波をエバネッセント場と呼ぶ。そしてエバネッセント場から放出(反射)する電磁波はエバネッセント波、エバネッセント光、近接場光と呼ばれる。
屈折率の高い媒質から低い媒質に電磁波が入射する場合、入射角をある臨界角以上にすると電磁波は全反射するが、その際には波数の(境界面に対する)垂直成分が虚数になっている為に1波長程度まで低媒質側の内部に電磁波が浸透することになる。
エバネッセント波は反射した物体の表面近傍の状態を観測できる為に近年注目を集めている。1つには屈折とは異なる物理現象であるために、波長よりも短い構造を反映する為に波長による回折限界を超えた分解能での観測が可能になる(フォトン走査型近接場光顕微鏡)。
あるいは試料の表面内部に浸透するので、反射光による原子分光(赤外吸光分析)する分析装置などにも応用されている。
全反射をしている面の外側、すなわち屈折率の小さい媒質中には光がしみ出し、境界面に沿って伝わる。これをエバネッセント波という。この面の外側に光の波長程度の間隔を置いて屈折率の高い媒質を再び置けば、エバネッセント波を介して光は透過し、境界面での反射は全反射でなくなる。