出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
チェレンコフ放射 その2(終わり)
チェレンコフ放射は、しばしば飛行機や弾丸が超音速で移動するときに発生するソニックブームに喩えられる。超音速の物体によって発生する音波は、十分な速度がないため、物体自身から離れることができない。そのため音波は蓄積され、衝撃波面が形成される。
同じようにして、荷電粒子も絶縁体を通過するときに、光子の衝撃波を生成することができる。
上図において、粒子(赤い矢印)は速度vpで物質中を通過する。ここでは、粒子の速度と真空中の光速との比をβ=vp/cと定義する。nを物質の屈折率とすると、放射される電磁波(青い矢印)の伝播速度はvem=c/nとなる。
三角形の左の頂点は、ある初期時点(t=0)における粒子の位置をあらわす。右の頂点は、ある時間における粒子の位置をあらわす。あるが与えられた場合、粒子の移動距離は
であり、放射電磁波の移動距離は
となる。ゆえに、放射角は
となる。
・応用
-粒子物理学
小柴昌俊によるカミオカンデやスーパーカミオカンデなどでは、円錐状に広がるチェレンコフ光を捕らえることによりさまざまな研究を行う。そのチェレンコフ光がニュートリノにより散乱された電子により発生したのであれば、チェレンコフ光の観測結果から電子の運動方向や速度が分かり、それらからニュートリノの飛来方向などを計算することができ、ニュートリノが観測できる。
-臨界事故
チェレンコフ光の例としては、原子力発電所の燃料が入ったプールの中で見える青白い光がある。東海村JCO臨界事故やチェルノブイリ原発事故で「青白い光を見た」と作業員が言ったので、臨界事故の確認がとれた。なお、東海村JCO臨界事故で見えた光がチェレンコフ光であったか別現象であったかについては、臨界事故の記事に考察がある。