出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
多元宇宙論 その1
多元宇宙論(Multiverse)とは、複数の宇宙の存在を仮定する仮説である。
・概要
多元宇宙 (multiverse, meta-universe or metaverse) は、仮説として可能性のある複数の宇宙の集合である。多元宇宙はすべての存在を含む。これは、われわれが一貫して経験している歴史的な宇宙に加え、空間、時間、物質、およびエネルギーの全体、そして、それらを記述する物理法則および物理定数なども含まれる。この語は1895年にアメリカの哲学者で心理学者のWilliam Jamesによって造られた。多元宇宙が含むそれぞれの宇宙は、平行宇宙 (parallel universes) と呼ばれることもある。
多元宇宙の構造、そこに含まれるそれぞれの宇宙の性質、およびそれら宇宙の間の関係は、考えている特定の多元宇宙仮説に依存する。宇宙が一つでないと考える理由(多元宇宙が存在する意味)は仮説によってさまざまである。宇宙論、物理学、天文学、宗教、哲学、トランスパーソナル心理学およびフィクション、特にサイエンスフィクションとファンタジーにおいて、多元宇宙の仮説が立てられてきた。これらの文脈では、平行宇宙は"代替宇宙" (alternative universes)、"量子宇宙" (quantum universes)、"相互浸透次元" (interpenetrating dimensions)、"平行次元" (parallel dimensions)、"平行世界" (parallel worlds)、"代替現実" (alternative realities)、および"代替時系列"(alternative timelines) などと呼ばれることもある。
・単に距離によるもの
現在の宇宙論がインフレーションを想定する限り、観測可能な宇宙以上の空間を必然的に内包する。
つまり同一のビッグバンから生まれた領域内に、決して物理的に干渉、観測できない領域を複数選ぶことができる。物理的に干渉できないのだからこれは一種の別の宇宙であり、平行宇宙である。ただし基本的には超遠方であるだけであって、基本的な物理法則、物理定数、および素粒子の種類は合致すると考えられる。
・複数の泡によるもの
ある種の物理理論によると、インフレーションの過程で複数の泡が出来てしまってもよい。上記の多元宇宙はここでいうところの泡の中で別の場所という話にすぎず物理定数と素粒子の共通性があるが、この場合別の泡では物理定数と素粒子が異なってもよい。
・多世界解釈
量子力学の解釈の1つで波動関数の収縮を想定せず、すべての解に対応した世界があるとするもの。
・多次元によるもの
我々が住む宇宙は無限ないし多くの次元を持つバルク(空間)に浮かぶたったの三次元のブレイン(膜)であるとするもの。当然、バルク内に複数のブレインがあることが許容される。
・万物理論の自由性によるもの
それが最終的にどんな形をとるのかは別として、万物理論に何らかの”物理定数”が含まれる場合、即座に他の値ではいけなかったのか?という疑問が生ずる。一番簡単な説明は有りうる値すべての宇宙が実在し、たまたま我々の宇宙ではその値であり、そうでなければ我々は生まれなかった、という人間原理によるものである。