出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
宇宙の終焉 その1
宇宙の終焉(Ultimatefate of the universe)とは、宇宙物理学における、宇宙の進化の最終段階についての議論である。さまざまな科学理論により、さまざまな終焉が描かれており、存続期間も有限、無限の両方が提示されている。
宇宙はビッグバンから始まったという仮説は、多くの科学者により合意を獲得している。宇宙の終焉は、宇宙の質量 / エネルギー、宇宙の平均密度、宇宙の膨張率といった物理的性質に依存している。
・宇宙の終焉に関するいくつかの理論
20世紀初めまで、宇宙に関する科学的描像の主流は「宇宙は永遠に変化をしないまま存在し続ける」というものであった。このような宇宙モデルは現在では定常宇宙論として知られている。しかし1920年代にハッブルが宇宙の膨張を発見したことで、宇宙の始まりと終わりが科学的研究の重要な対象となった。
宇宙の始まりはビッグバンと広く呼ばれている。宇宙の終焉に関する理論は大まかに3つのグループに分けられる。
終焉はない
現在の観測結果にも拘らず、宇宙はかつて信じられていたように永遠のものである。
-定常宇宙論
一時的事象として終焉を迎える
ビッグバンの前にはビッグクランチがあった。宇宙は将来再びビッグクランチを迎え、続くビッグバンで再び膨張する。このような振動が永遠に続く。
-振動宇宙論 (Oscillatoryuniverse)
サイクリック宇宙論
永久的な事象として終焉を迎える
宇宙自体に終焉はないが、宇宙内部の存在全てが一様な平衡状態に達する。
宇宙の熱的死
-ビッグリップ(Big Rip)
宇宙の低温死 (Big Freeze /Big Chill / Cold Death)
ある時点で重力が宇宙膨張に打ち勝ち、宇宙は収縮に転じて一点に潰れる。
-ビッグクランチ
現代の理論は全て、宇宙論的推測を行うための共通の背景を与えている一般相対性理論を受け入れなくてはならない。上記の理論のほとんどは一般相対論の方程式の解であり、宇宙の平均密度や宇宙定数の値といったパラメータのみが異なっている。
初めの2つのグループについてはここでは論じない。宇宙の終焉そのものを否定しているからである。これらの理論では、何らかの意味のある活動がこの宇宙で永遠に続き得るとされる。以下ではこれら以外の可能性について議論する。
-2種類の終焉
曲率0か負の開いた宇宙と、曲率正の閉じた宇宙かで、宇宙がどう終焉するかは大きく変わる。
-開いた宇宙の熱的死
開いた宇宙は、わずかに減速しながらも永遠に膨張を続け、熱的死を迎える。宇宙内部の環境は、我々が知っているような生命が存在できない状態にある時点で落ち着くと考えられる。このような宇宙で非常に長い時間スケールで起こると考えられる様々な事象については、1E19 s 以上を参照のこと。
このような宇宙モデルの下で遠い将来に起こる現象を時系列順に正確に推定することは非常に難しいが、定性的にはおよそ以下のような現象が起こると考えられる。
-星形成の停止
現在の宇宙では、通常の物質(バリオン)の大部分は天体、特に恒星と星間ガスの形で存在している。恒星は時間とともに進化し、軽い星は白色矮星として一生を終える。重い星は進化途中での質量放出や超新星爆発によって物質の大半を星間ガスに戻し、質量の一部が中性子星やブラックホールとなる。星間ガスの高密度の部分が収縮すると再び恒星が生まれる。このようにしてバリオンはリサイクルされているが、恒星の進化サイクルごとにある割合の質量が白色矮星や中性子星、ブラックホールといったコンパクト天体として固定されるため、長い時間が経つと宇宙全体でリサイクル可能なバリオンの量は少しずつ減っていき、やがて星間ガスは尽きて新たな星形成は起こらなくなると考えられる。一説によると、このような状態になるまでの時間はおよそ1014年程度と見積もられている。
星形成が起こらなくなると、宇宙には可視光を放つ天体は次第に減っていき、やがては冷却途中のコンパクト天体の余熱が赤外線や電波で見えるだけになる。