出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
CKM行列 その4
・ウォルフェンシュタイン表記
ウォルフェンシュタインによる表記法では、4つの媒介変数λ、A、ρ、η が使われ、標準表記を簡略化できる利点がある。標準表記で使われる変数とは以下のように対応している。
λ= s12Aλ2= s23
Aλ3(ρ- iη) = s13e-iδ
λ3を基準にした場合に与えられる式は
である。CP対称性の破れはρ - iη となる。各成分の値は、標準表記の値を代入した場合、以下の通りとなる。
λ= 0.2257+0.0009
-0.0010
A= 0.814+0.021
-0.022
ρ= 0.135+0.031
-0.016
η= 0.349+0.015
-0.017
・演算
N世代のクォークが存在する場合を考える。まず行列の成分の個数を数える必要がある。成分 V は実験により導かれる。
Nx Nの複素行列は2N2個の実数を含んでいる。
ユニタリティーの制限は
であるので、対角成分(i=j)はN、それ以外の成分はN(N-1)の制限がある。よってユニタリー行列で独立な実数はN2個となる。
位相の1つはクォーク場へ吸収できる。全体に共通な位相は吸収できない。よって独立な数は(2N-1)個であり、変数は(N-1)2個となる。
これらのうちN(N-1)/2個はクォーク混合角と言われる回転角である。
残りの(N-1)(N-2)/2個が複素位相であり、CP対称性の破れの原因となる。
N= 2 の場合、2世代のクォーク間の混合角を表す位相因子は1つとなる。これはクォークの世代が2つしか知られていなかったときにCKM行列の前身になったもので、発見者にちなんでカビボ角といわれる。標準理論では N = 3 となり、3つの混合角とCP対称性の破れが現れる。