出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
CKM行列 その2
・カビボ角
1963年、カビボはそれまでのゲルマンらの研究により導かれていた弱い相互作用の普遍性を保存するためにカビボ角(θc)を提唱した。当時まだクォークモデルは存在していなかったが、これはダウンクォークやストレンジクォークがアップクォークへと崩壊する場合にかかわる現象(|Vud|2 および |Vus|2 に相当する)をよく説明できた。弱荷電カレントによりアップクォークへと崩壊するクォークは、一般に下系列クォークの重ね合わせ状態となっている。これを d′として表記すると、ベクトル表示では
となる。 |Vud|2 と |Vus|2 の和は 1 になるはずであるが、実際には 0.99999 にしかならない。これはトップクォークの存在を考慮していなかったためであるが(トップクォークを考慮すれば|Vut|2 = 0.00001 となり、総和は 1 である)、当時の実験精度ではトップクォークの存在を予言するには至らなかった。カビボ角は、ダウンクォークとストレンジクォークの質量固有状態|d>,|s>が作り出す質量固有ベクトル場が、弱固有ベクトル場|d'>,|s'>へと変化する場合の回転角を示す。θC = 13.04°.
1974年にチャームクォークが発見されると、ダウンクォークやストレンジクォークがチャームクォークにも崩壊することが確認され、以下のベクトル方程式が追加された。
となる。この2行2列の回転行列はカビボ行列と呼ばれ、|Vij|2は、クォーク i がクォーク j に崩壊する確率を示している。