出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
アインシュタイン方程式 その1
アインシュタイン方程式(theEinstein equations)は、アルベルト・アインシュタインが1916年に一般相対性理論の中で導いた、万有引力・重力場を記述する場の方程式(Fieldequation)である。アイザック・ニュートンが導いた万有引力の法則を、強い重力場に対して適用できるように拡張した方程式であり、対象とする物理的現象は中性子星やブラックホールなどの高密度・大質量天体や、宇宙全体の幾何学などになる。アインシュタインの重力場の方程式(Einstein's field equations of GeneralRelativity)とも呼ばれ、このため EFE とも略される。概略や導出・応用などの詳しい説明は、一般相対性理論の項を参照のこと。
・概要
一般相対性理論によれば、大質量の物体は周囲の時空を歪ませる。すなわち、重力の正体は時空の歪みである、と説明される。その理論的な帰結・骨子となるのが、次のように表されるアインシュタイン方程式である。
左辺は、時空がどのように曲がっているのかを表す幾何学量(時空の曲率)であり、右辺は物質場の分布を表す。
左辺はまとめてとしてアインシュタイン・テンソルと呼ばれ、右辺のTμνはエネルギー・運動量テンソルである。
左辺のRμνはリッチの曲率テンソル、Rはリッチスカラーであり、どちらも時空多様体の計量テンソル (metric tensor) gμνから計算される幾何学量である。
πは円周率、Gは万有引力定数、cは光速度である。
添え字μ,νは、それぞれ時空の座標を特定するもので、時間1次元と空間3次元の4成分を動き、gμνは 1 + 2+ 3 + 4 = 10 個の独立成分を持つ 4×4 の対称テンソルである。
表記の煩雑さを減らすために、右辺の係数をアインシュタインの重力定数としてまとめて、
と簡潔に表されることも多い。
おおざっぱに言えば、星のような物質またはエネルギーを右辺に代入すれば、その星の周りの時空がどういう風に曲がっているかを読みとることができる式である。曲率を表す左辺は計量テンソルgμνの微分で書かれているので、アインシュタイン方程式は計量テンソルについての方程式である。右辺の物質分布を定めれば左辺の空間の曲率が決まる。空間の歪みが決まれば、その空間を運動する物質の運動方程式(測地線方程式)が決まるので、物質分布も変動することになる。具体的には、アインシュタイン方程式は、10本の偏微分方程式を与える。
10本の方程式のうち、4本はエネルギー保存則と運動量保存則に対応するものであり、Gμνの空間成分に関係する残りの6本の方程式が時空の運動方程式に相当する。これらは時間微分2階の偏微分方程式6本(あるいは時間微分1階の偏微分方程式12本)であるが、座標の選択の自由度(ゲージの自由度)が4つ、保存則を満たしながら時間発展を行うための拘束条件が4つあると考えれば、たとえ真空中であっても1階の微分方程式4本(2階に直せば2本)の自由度が残る。この自由度は時空の歪みを周囲に波として伝える「重力波」のモードが2つあることを意味している。