出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
大統一理論 その1
大統一理論(grand unification theory あるいはgrand unified theory、GUT)とは、電磁相互作用、弱い相互作用と強い相互作用を統一する理論である。幾つかのモデルが作られているが、未完成の理論である。
電磁相互作用と弱い相互作用の統一は電弱統一理論としてシェルドン・グラショウ、スティーブン・ワインバーグ、アブドゥス・サラムにより完成されている。
・概要
自然界は四つの基本的な力「電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用、重力」で表される。宇宙の始まりに存在したのは唯1つの力だけで、その後これらの4つに分かれたという考え方から、これら4つの力を1つの形で表して統一しようとする理論の1つである。大統一理論はこれらのうちで重力を除いた前者3つを1つの形に統一しようとしている。大統一理論は重力については考えていない。重力までも統一する理論としては超弦理論などが研究されている。
歴史はマックスウェルによる場の方程式による電磁場理論によって、電気と磁気が統一されたことから始まる。アインシュタインの一般相対性理論に大きな影響を及ぼし、「統一場理論」への夢につながった。その後電磁相互作用と弱い相互作用が統一された。その後作られたこの理論は、3つめの「強い相互作用」も統一しようとする理論である。「ゲージ変換」という、ある式にある操作を施しても対称性(ゲージ対称性)が保たれるという数学的手法を使い、知られている性質を説明し未知の性質を予言して検証することによって理論を確認しようとしている。標準理論では説明できない現象を説明しようとして作られたこの理論は、ビッグバン理論(インフレーション宇宙)の基礎となっているため、様々な検証がおこなわれている。カミオカンデの実験により最初の大統一理論は否定され、超対称性という概念を加えた新しい大統一理論を検証の対象としている。1つは東京大学の森俊則教授の率いる日本・スイス・イタリア・ロシア・米国の国際チームがスイス・ポールシェラー研究所で行っているのが、ミュー粒子が崩壊して電子とガンマ線になること(μ→eγ(ミューイーガンマ)崩壊)を観測する実験である。標準理論では起こらないが、大統一理論では数千億から数兆分の一の確率で起こることが予想されていた。2011年9月に発表された5年間の5千億個の実験による中間報告では発見できなかったため、実験を2年間継続し10兆個のミュー粒子で検証する。ミュー粒子の崩壊を発見できない場合、大統一理論は修正する必要が出てきて、さらにビッグバン理論は成立せず、宇宙の起源に対する新たな理論の構築が求められる。
・GUTのモデル
現在、一定の成功をおさめている標準模型は、ゲージ群
に対するゲージ理論であり、大統一理論は基本的にこのゲージ群を含む更に大きなゲージ群に対するゲージ理論である。
Gsは3つのゲージ群の積の形になっていて、それぞれにゲージ結合定数を持つ。力を統一するということは、1つのゲージ群として表し、結合定数を1つにすることである。
Gs はランク4である。大統一理論のモデルとしてはランクが4以上のゲージ群となる。
Gs の次元は12でそれに対応して12個のゲージ場を持つ。大統一理論のゲージ群では次元が増え、それに対応してゲージ場も増える。
標準模型は電弱相互作用が破れるウィークスケール
での理論である。大統一理論はそれより高いエネルギースケール(GUTスケール)で破れる。大統一理論で新たに増えるゲージ場は対称性が破れると、GUTスケール程度の質量を持つ。
対称性が高くなると、幾つかのフェルミオンがまとまって記述される。