Quantcast
Channel: アンディマンのコスモロジー (宇宙論)
Viewing all articles
Browse latest Browse all 186

天体宇宙物理学への扉を開く

$
0
0

出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
恒星 その4(終わり)
・観測
-距離と明るさ
恒星までの距離測定には、一般的に年周視差が用いられる。これは地球が公転運動する中で、近距離の恒星が遠距離の恒星に対して見かけ上の位置に生じる差を観測するもので、1秒角の視差がある時、公転軌道の中心にある太陽からその対象までの距離をパーセク(pc) で表す。1pc 3.26光年、2.06×105AUそして3.08×1013kmである。現在判明している年周視差が最大、すなわち太陽の次に近い恒星はケンタウルス座アルファ星であり、視差0.76秒角、距離1.32pcつまり2.72×105AUとなる。この年周視差を用いる計算法は地動説確立後に間もなく意識され、18-19世紀頃から観測が始まり、1837-38年頃に手段として正しさが確認された。
恒星までの距離が判明すれば、本来の明るさである絶対等級が計算できる。ある恒星までの距離を10パーセクとした場合に見える視等級を表す。
-恒星の分光
恒星の光を分光器にかけ、そのスペクトルを観察すると、暗い筋であるフラウンホーファー線が見られる。この線が現れる位置は恒星の表面温度を反映しており、19世紀末から20世紀にかけてハーバード大学天文台が高温のO型から低温のM型までの7種類の分類を施した。
O型:電離したヘリウム、高階電離状態の炭素・窒素・酸素などの線が現れる。
B型:強い中性ヘリウムや水素の吸収線が現れる。
A型:強い水素の吸収線と、金属吸収線が現れる。
F型:弱い水素の吸収線と、強い電離カルシウムのHK線が現れる。
G型:F型よりも水素の吸収線が弱く、HK線はより強い
K型:多くの金属吸収線が現れる。
M型:K型に、酸化チタン(TiO)の吸収帯が際立つ。
現在は、この7種それぞれをさらに9段階のサブクラスに分け、合計63段階で表示される。
1940年代に、同じスペクトルに現れる線の太さや強さが着目され、これが恒星の絶対等級と関係する事が明らかになった。例えばBA型の恒星では、絶対等級の明るい星ほど水素のパルマー線の幅が狭く、絶対等級効果と呼ばれる。これを元に光度階級という指標が導入され、ローマ数字のIからVまでの5段階で表す。
I型:最も直径が大きい恒星(超巨星)
II型:次に直径が大きい恒星輝巨星)
III型:直径が大きい恒星(巨星)
IV型:巨星と矮星の間に当たる恒星準巨星)
V型:矮星(主系列星)
上記2種類の分類を組み合わせる表示法はMK2次元分類と呼ばれる。例えば太陽はG2V、ベガはA0V、はくちょう座のデネブはA2Iである。
スペクトルを分析すると、特定の元素が示すフラウンホーファー線は実験室で観察する線とずれが見られる場合がある。これは、恒星の固有運動によって距離が変化するために生じるドップラー効果が影響する。ここから逆に、恒星がどのような運動をしているかを分析することができる。また、恒星が含む元素構成比を測定する事も可能であり、恒星の進化状況を判断する材料も与える。
-色
恒星は黒体放射にほぼ等しい光を連続して放っている。これを利用して表面温度を測定する方法では、BBlue青)と VVisual可視)2種類のフィルターを通して等級を測定し、その差(B-V)から温度を推計する方法が用いられる。このB-V透過率は色指数と呼ばれ、A0型恒星をゼロと置き、青が強いと等級数は小さくなるため、色指数が大きいと温度が低く、小さいと温度が高いと考えられる。
-ヘルツシュプルング・ラッセル図
イメージ 1
20世紀初めに、アメリカのヘンリー・ノリス・ラッセルが恒星のスペクトルと絶対等級の相関関係を図に並べたところ、多くの星が左上と右下を結ぶ帯を成す事が示された。また、デンマークのアイナー・ヘルツシュプルングも独立に恒星の色と明るさの関係に偏りがあることを示した。この相関はヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)として纏められ、恒星の進化を示したものを認識されるようになった。HR図の横軸はスペクトルの型で表す場合と色指数で表す場合があるが、どちらも基本的に恒星の表面温度の指標である。なお後者は色-等級図と呼ばれる場合もある。
HR図にある恒星の位置は、その星の大きさを知る手がかりを与える。恒星が放射するエネルギー総量は、単位面積当たり放射量と星の表面積の積で表される。面積当たり放射量は半径の2乗に比例し、シュテファン=ボルツマンの法則から温度の4乗に比例する。スペクトルつまり表面温度が同じで絶対等級が0級と10級のふたつの星は、総放射量の差は10000倍になる。これを半径に置き換えると100倍の差がある事になる。同じ絶対等級の場合、A型(表面温度10000K)とM型(同3000K)では、A型はM型の3.3倍であり、この4乗が単位面積当たり放射量になるため差は120倍となる。しかし総放射量は同じであるため、表面積ではA型の表面積M型の1/120となり、半径では1/11となる。
X
X線は恒星の死後の姿である中性子星や、恒星の放射物が連星を成す高密度星に引きずり込まれる際に発生することが知られるが、単独の恒星からも観察される。
太陽をX線観測すると、磁力線のねじれと再結合の際にエネルギーが解放され、コロナやフレアを発する際に放射が起こる事が知られている。形成中で若く、まだ中心で水素の核融合を起こす前段階にある前主系列星という恒星は、太陽よりも強い短波長の硬X線を放つ現象が知られる。形成途上の恒星は周囲から収縮途上のガスの流入が続き、その角運動量が持ち込まれて自転が早くなる。すると星の内部で対流が大規模に起こり、発生するフレアも太陽の数万倍規模になって強いX線が生じると考えられている。前主系列星は星間ガスに取り囲まれて可視光線では観測しづらい。しかし硬X線を使えばその位置を知る手段のひとつになる。
太陽質量の5倍以上の恒星は表面対流を起こしておらずコロナやフレアが生じないためX線は放射しないと考えられていたが、X線天文衛星HEAO-2はこのような星からX線を観測した。大質量星は多くの質量を星風の形で放出しており、これが周囲のガスと衝突すると高温のプラズマが発生し、X線を放射している。これらの観測は星間ガスの分布を知る上で有用である。なお、大・中質量星でもフレアのような磁力線由来のX線と思われるX線が観測された例もあるが、そのメカニズムはわかっていない。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 186

Trending Articles