出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
恒星 その3
-形成と進化
恒星は、周囲より僅かに物質の密度が高い(それでも地球上の実験室で作ることができる真空よりはずっと希薄な)領域である分子雲から生まれる。分子雲の近くで超新星が爆発したり恒星が近くを通過したりするなどして分子雲に擾乱が起こると、その衝撃波や密度揺らぎによって分子雲の中に圧縮される部分が生じ、重力的に不安定になり収縮していく。(大質量星が作られると、その周囲の分子雲が星からの紫外光で電離されて散光星雲(輝線星雲)を作ったり、強烈に照らし出されて反射星雲として観測されたりするようになる。このような星雲の例として、有名なオリオン大星雲やプレアデス星団の周囲の青い星雲などが知られている。)
ガス塊の質量が十分大きいと、ガス塊は自己重力が圧力に打ち勝って収縮を続け、次第に内部の温度が上昇し、やがて熱放射で輝くようになる。これが原始星である。
原始星の中心温度が数百万度から約1000万度に達すると、中心で核融合反応が始まる。すなわち、4個の水素原子を1個のヘリウム原子に変え、エネルギーを発生させることができるようになる。するとこれが熱源となって圧力を発生し、重力による収縮が止まる。この段階の恒星を主系列星という。恒星は一生のうち約90%の時間を主系列星として過ごす。
質量が太陽の約8%よりも小さく、核融合反応を持続することができない星(褐色矮星と呼ばれる)は、自らの重力により、数千億年(宇宙が誕生してから現在までの時間よりも長い)という極めて長い時間をかけて、位置エネルギーを熱エネルギーに変換しながらゆっくりと収縮していく。最後にはそのままゆっくりと暗くなっていき、黒色矮星へと移っていく。
褐色矮星よりも重いが質量が太陽の46%よりは小さい恒星(赤色矮星と呼ばれる)は、核反応が遅く数千億年から数兆年かけて燃料である水素を使い果たした後、ヘリウム型の白色矮星になるとされている。
赤色巨星の断面図
大部分の恒星は、燃料となる中心部の水素をほぼ使い果たすと、外層が膨張し巨大な赤い恒星に変化していく。これは赤色巨星と呼ばれる。(約50億年後、太陽が赤色巨星になった時には、金星を呑み込むほどに膨張すると言われる。)やがて核の温度と圧力は上昇し、ヘリウムが炭素に変わる核融合が始まる。恒星が十分な質量を持っている場合は、外層はさらに膨張して温度が下がる一方、中心核はどんどん核融合が進み、窒素、酸素、ネオン、マグネシウム、ケイ素、鉄というように、重い元素が形成されていく。
太陽程度の、平均的な質量を持った恒星では、中心核での核融合反応は窒素や酸素の段階で止まり、外層のガスを放出して惑星状星雲を形成する。中心核は外層部の重力を支えきれず収縮する、収縮するとエネルギーを生じ再び膨張する。こうして膨張収縮を繰り返す脈動変光星となる。高密度になったものの、もはや核融合を起こすことができなくなると縮退物質が残る。これは白色矮星と呼ばれる。白色矮星はゆっくりと熱を放出していき、極めて長い時間をかけて、黒色矮星になっていく。
太陽の8倍よりも質量が大きい恒星では、密度が比較的小さいために中心核が縮退することなく核融合反応が進んで次々と重い元素が作られて行く。最終的に鉄が生成されたところで、鉄原子は安定であるためそれ以降は核融合反応が進まなくなり、重力収縮しながら温度が上がっていく。中心温度が約100億度に達すると鉄の光分解という吸熱反応が起き、中心核の圧力が急激に下がって重力崩壊を起こす。その反動で恒星は超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こす。これは宇宙で起こる現象の中で、人間的なタイムスケールで起こる数少ないものである。恒星の質量の大部分は爆発で吹き飛ばされ、かに星雲のような超新星残骸を作る。この時恒星は急激に明るくなり、明るさでおよそ1億倍、等級で約20等も増光し、数週間の間、超新星一つが銀河全体と同じ明るさで輝くことも多い。
歴史上、超新星は、今まで星が何も無かったところに突如出現した「新しい星」として「発見」されてきた。超新星爆発が起こったあとの中心核の運命は恒星の元の質量により異なる。太陽の20倍程度以下の質量を持った恒星の場合、中心核は中性子星(パルサー、X線バースター)と呼ばれる天体となる。さらに重い恒星の場合には中心核が完全に重力崩壊を起こしてブラックホールとなる。
重元素を多く含む、吹き飛ばされた恒星の外層は、やがて再び分子雲を作り、新しい恒星や惑星を作る材料となる。このように、超新星から放出された物質や巨星からの恒星風は、恒星間の環境を形成するのに重要な役割を果たしている。