出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
アトラクター その2
・アトラクターの形状の種類
アトラクターは力学系の位相空間の部分集合である。1960年代頃の教科書によると、それまではアトラクターは位相空間の「幾何学的な」部分集合(点、直線、曲面、体積領域)であると考えられていた。観測されていた(位相幾何学的に)「悪い」集合(wild sets)は、取るに足らない例外であると考えられていた。スティーヴン・スメイルは彼の考案した蹄鉄型写像が構造安定であること、およびそのアトラクターがカントール集合の構造を持つことを示すことに成功した。
2つの簡単なアトラクターとしては、不動点とリミットサイクルが挙げられる。その他にも多くの幾何学的な集合がアトラクターであり得る。それらの集合(あるいは集合上での動き)を図示することが困難である場合、そのアトラクターはストレンジアトラクターと呼ばれる(後述)。
・不動点
一般的に、不動点とは関数の点で変換に対して変化しないものである。力学系の発展を一連の座標変換の過程の連続であると見なしたとき、その全ての過程の下で不動のものとして固定し続ける点が存在するかもしれない。一般的にはそのような点は存在しないだろうが、存在する場合もあるであろう。落下する小石や、減衰振子や、グラスの中の水などが最終的に落ち着くような状態である最終状態で、ある力学系がそこに向かうようなものは、その発展関数の不動点に対応し、そのような最終状態はアトラクターにおいても起こるであろうが、その二つの概念は同値であるとはいえない。あるボウルの周囲を回るビー玉は、たとえ物理学的な空間においては不動点を持たなくても、位相空間においては持つ可能性がある。そのビー玉が運動量を失い、そのボウルの底に落ち着いたなら、そのビー玉は物理空間および位相空間において1つの不動点を持ち、その力学系のアトラクターに位置することになる。
・リミットサイクル
リミットサイクルは系の周期的軌道であり、孤立している。例えば振り子時計の振り子、ラジオのチューニング回路、安静時の心拍などがそれに当たる。理想的な振り子は軌道が孤立していないのでリミットサイクルではない。理想的な振り子の位相空間では、周期軌道の任意の点に対して別の周期軌道に属する点が存在する。