出典:フリー百科事典「ウィキペディア」より引用
CKM行列 その5(終わり)
・クォーク混合の発見
クォーク混合は以下の2つの観測結果を説明するために考えだされた。
アップクォーク↔ダウンクォーク、電子↔電子ニュートリノ、ミューオン↔ミューニュートリノの変換は類似した振幅を持っている。
ストレンジネスが変化する素粒子の変換でΔS=1はΔS=0の 1/4 の振幅を持っている。
これらについて、カビボは弱い相互作用の普遍性が1.を、ダウンクォークとストレンジクォークの混合角が2.をそれぞれ解決すると仮定した。
クォークが2世代の場合はCP対称性の破れを示す位相は現れない。その一方で中性K中間子の崩壊に伴う対称性の破れは1964年に発見されており、標準理論が発表されると1973年に小林と益川が指摘したように3世代目のクォークの存在が強く示唆された。1976年にはフェルミ研究所でボトムクォークが発見され、すぐにこれと対をつくるトップクォーク探しが始まった。
・弱い相互作用の普遍性
CKM行列の対角成分でユニタリティーの制限は
である。これは上向きアイソスピンを持つクォークと下向きアイソスピンを持つクォークのペアの数が全ての世代で同じことを示唆している。この関係はカビボが1967年に弱い相互作用の普遍性(弱い相互作用のユニバーサリティー)として初めて指摘した。理論上全ての SU(2) 粒子対は弱い相互作用のゲージボソンと同じ強さで結合することが導かれ、これまでの実験結果と一致している。
・ユニタリティー三角形
CKM行列で残りのユニタリティーの制限は
である。任意の i および j において3つの複素数の制限があり、k においては1つの制限がある。これは複素平面上でこれらの数が三角形の各頂点を構成することを示している。i と j は6つの選択ができるので6つの三角形が作図できるが、これらをユニタリティー三角形(ユニタリ三角形)と呼ぶ。三角形の形は異なるにしても面積は全て等しく、これがCP対称性の破れの位相因子に関係する。標準理論でCP対称性の破れが存在しないと仮定して特定の変数を入れると三角形は作図できない。よってユニタリティー三角形はクォーク場の位相因子に関わっているといえる。
直接の観測結果では三角形の各辺は開いているため、日本の高エネルギー加速器研究機構とカリフォルニアのスタンフォード線形加速器センターにおいて、標準理論を検証する一連の実験として三角形が閉じているかどうか実験が続けられている。